10月10日(月祝日)

 この土日はグレートホステスに行けなかった。ややいいことが続いたので途切れるのはいやなので、この祝日にいることを願って行った。
 行く途中、渡ろうとした横断歩道の信号が赤に変わりそうになる。ここで走って渡るより、次の青信号を待って渡れば、沙夜ちゃんが案内してくれるいいタイミングで店につくかもしれない。
 この坂を上るより、脇の階段を使って橋に上がればものすごくいいタイミングで店に入れるかもしれない。
 最近はそんなことを考えながら歩いているが、今日はその考えが一段と強い。
 もう沙夜ちゃんがいると確信している。
 店に近づき、裏口に入るために曲がる角のところで店内を見た。沙夜ちゃんがいるのが見えた。なので今日は裏口には行かず、そのまま入店した。
 レジのところを見ると、入り口と反対方向に顔を向けながら立っているウエイトレスさんあり。
 そのウエイトレスさんを見ながら歩いていると、間に柱が入って一瞬見えなくなる。そして再び視界に入ったときにはそのウエイトレスさんはこっちを向いていた。
 沙夜ちゃんだ。メニューを両手で持ってスタンバイ。そしていつものように無言のご案内。
 いつもと同じく、店内が見渡せる席に着く。そして沙夜ちゃん「メニューでございまーす」と、ほかの客に対してはありえないくらいの超低トーンで言ってテーブルにメニューを置いてくれた。
 一応メニューを広げるが、頼むものは決まっているのでとくに凝視しない。すると、それを悟った沙夜ちゃんが早足で注文を取りにきてくれた。
 沙夜ちゃん「はい」
 そう言いながら到着。注文しても「はい」とトーンの低い返事だけしてキッチンへ戻っていった。
 覆面調査員がいたら、これはかなり悪い接客という評価をつけられるはずだ。だがだがだが!これはあくまでもワシに対してだけ。ほかのの人には優秀な接客をしているのだ。
 今日も優越感を感じていた。
 食事のご用意もお品運びも全て沙夜ちゃん。伝票を入れる筒がなくて、カレーパンの宣伝をしている三角の紙筒で伝票を押えて置いてくれた。
 ワシの左右両隣には客がいたが、両方ともワシの入店から少しして店を出た。そのワシの両隣の席の片づけをしに沙夜ちゃんが来た。
 食器類を全て運び出し、何もなくなったテーブルの上を拭く。右の席が終わり、次に左の席。その真ん中でワシは持ってきた書籍に目を通している。
 ワシが本を読み、そこのテーブルを拭いている沙夜ちゃん…。将来ワシが築く家庭の風景でありますように。
 右隣の席にオジサン4人の客が座った。
 ファミレスの壁際の席は一つの長いソファになっていて、テーブルを離すことによって区切られる。
 ワシのすぐ右に座ったオジサンが、ワシにピッタリくっついて座る。ワシがそれに気付く間もなくおじさんは言った。
 オジサン「ひとり奥の席に入るから、その人が来るまでちょっとごめんね」
 あそ。
 ドリンクバーで作業をしている沙夜ちゃんのところに、厨房からコックが出てきた。
 沙夜ちゃんに話しかけ、沙夜ちゃんも満面の笑みで応える。そして仲良さそうにキッチンへ入って行った。
 嫉妬しても始まらないのでやめておく。
 ただね、仲良さそうにはしてたけど、沙夜ちゃんのコックに対する態度はまあ初々しいこと。
 僕に対する態度はとても慣れ慣れで、身内同然だ。
 嫉妬の気持ちなんで起こらず、逆に勝った気分だ。
 沙夜ちゃんに「アハハ〜ン」って泣かせることができるやつがほかにいるか?
 再びドリンクバーに現われた沙夜ちゃん。それと同時に、さっきの隣のオジサンがドリンクのおかわりに行った。
 作業中の沙夜ちゃんに何か言ってから飲み物を注いだ。オジサン、この物語のヒーローとヒロイン両方に声をかけたことのある唯一の客となった。
 しばし沙夜ちゃんの姿が見えなくなる。時を同じくしてワシのコップが空っぽになった。
 いつもは沙夜ちゃんとドリンクバーで鉢合わせにならないようにタイミングを計って行くが、今は沙夜ちゃんの姿は見えないので、何も考えずにドリンクバーへ行った。
 そしたら沙夜ちゃんが出てきて、ドリンクバーで鉢合わせになってしまった。ワシは足を止め、先に沙夜ちゃんを通した。
 沙夜ちゃんは牛乳を補充、ワシはその沙夜ちゃんが補充している機械とつながっている熱湯装置でお湯を注いだ。
 注ぎ終わり、席に戻る途中に目の前の鏡に背後の沙夜ちゃんが映った。しかし特にワシのことを見ている様子もなく落胆。
 入店から1時間、沙夜ちゃんはドリンクバーで飲み物を注いで控え室に入っていった。上がりである。
 ところで、沙夜ちゃんは何を飲むんだろう。沙夜ちゃんが注いでいた機械のところへ見に行った。
 アイスココア。
 読んでいた書籍を手に持ったまま見に行ったので、戻ってくるときさっきのオジサンに不思議そうに見られた。
 そして沙夜ちゃん、白のカーディガンに黒のパンツという私服姿でお店をあとにした。
 ワシは背後の窓から沙夜ちゃんを見ようとしたが、今日は自転車ではなかったらしく、窓の近くを通らなかった。
 ワシも店を出る。店長のレジでお会計。
 今日は久しぶりに長い時間沙夜ちゃんを見ることができた。
 イラつくことに、来週の土日はいけないような予感。また再来週ですか…。

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