7月23日(土)

 仕事から帰り、グレートホステスに行くのにはちょうどいい時間…を少し過ぎていたかな。
 スーツのまま車に乗り込み、グレートホステスへ行った。
 駐輪場を見たが、先週に引き続き沙夜ちゃんの自転車はない。今日もいないかもな。
 いないと分かってて入るのはちょっとおっくうになってきたので、今日は駐車場に車を止めて車中から店内の様子をうかがうことにした。
 店内にはアロハの店長と見知らぬウエイトレス。この二人しか姿が見えない。
 しばらくして、肩に少しつくくらいの髪の長さのウエイトレスが見えた。喫煙席の作業場に立ったのでこっちに顔を向けた。
 あれは沙夜ちゃんだ。そう確信してすぐに入店した。
 案内は見知らぬウエイトレス。沙夜ちゃんはキッチンの奥に行った。一刻も早く沙夜ちゃんの姿が見たかったので、キッチンの奥を見た。
 若木さんだった…。
 沙夜ちゃんと若木さんを見間違えてしまった。もう1年以上も通っていて、当初からいる二人を見間違えるとは…。
 見間違えたのには理由がある。若木さんがやせたのだ。若木さんはどちらかというとふくよかなお方。人妻らしい風格を漂わせている。
 しかし最近はやせた。遠くから見ると、細い沙夜ちゃんと見分けがつかないほどだ。
 まあ若木さんの美貌にだまされての入店ということでいいか。
 今日の注文、2種類あるパフェのうち、どちらにしようか迷った。いつもどおりチョコパフェか、たまにはヨーグルトのパフェか。後者にした。
 店長に注文を取ってもらい、作ってもらって持ってきてもらった。パフェのときはいつも店長による手作り。
 パフェを食べ終わり座っていると、斜め前の女性が「地震だ!」と叫んだのと同時に、揺れが始まった。
 その揺れは瞬く間に強い揺れになった。
 「おいおいおい!」
 もしグレートホステスに来てるときに大地震がきたら…という想像はしたことがあった。それが現実に!?そう思うと自然に声が出た。
 しかし想像と違うところは、沙夜ちゃんがいないということ。沙夜ちゃんと同じ屋根の下で大地震を迎えたら…という想像だったので。
 はいはいそんなことはどうでもいいとして、揺れは何とかおさまった。
 震度3よりは明らかに大きい。そしてかつて1回だけ体験したことある震度5よりは小さい。よって今の地震は震度4だな。
 家族連れの中にいた小さな女の子が「地震、怖くない」と何度も繰り返し口にしていた。そう、それぐらいの気持ちで行きましょう。
 さて、そんな騒動もおさまり、時刻は17:00ちょっと前。この時間になって沙夜ちゃん来なければ、今日もなしだろう。もう少し様子を見て帰るか。
 今日座った席は背後に窓がある。あるとき後ろを振り返って外を見た。
 すると、ワシと同じ方向を見ながら(つまりワシに顔を背けながら)店に入ろうとする一人のギャルを発見。短いスカート、金色に近い色の茶髪、まぁるいうなじ。
 沙夜ちゃんご出勤である。
 店に入る。ワシのことをチラリとも見ずに(もはや見る理由などないし)キッチンへと入っていった。
 はい、1時間延長。
 沙夜ちゃんも加わったウエイトレス陣4人で、先ほどの地震のとき何をしていたかを話していた。
 沙夜ちゃんは何をしていたのかな?それが聞きたくて耳を済ませるも、沙夜ちゃんの言っていることが聞き取れない。
 しばらくしてその輪が解け、それぞれ仕事のポジションへと散って行った。
 「地震!そのときギャルちゃんは!?」
 聞きたかった。
 そういえばまだ伝票が来ていない。普通は注文の品と一緒に持ってきてくれるのだが。まあ遅れることもあるわな。
 その伝票を沙夜ちゃんが持ってきてくれた。テーブルの筒にヒョイっといれる。
 
「伝票でございます…」
 小さい。小さすぎる声だ。実際はああいっているが、雰囲気はもう「ほら、伝票だよ」という感じだ。
 僕にだけバカでかい声で挨拶してくれていたあのころにはもう戻れない…。
 若木さんがバイトを上がる。それと一緒に能崎先生に似た人も一緒にあがる。
 あれ?能崎先生に似た人って今日働いてたっけ?先週も働いてるところは見えずにあがるところだけしか見なかったな。
 もしかしたら厨房に転向になったのかもしれない。
 あのときの愛想の悪さを考えたら、そのほうがいいかもしれない。
 沙夜ちゃんが禁煙ゾーンに家族連れを案内していた。窓際にある三つの4人がけの席まで連れてきた。
 沙夜ちゃん「お好きな席にどうぞ」
 あ、席を選べるのは常連特権じゃなかったのかな?初めて来る家族連れにも特権あり。
 このお店はお子様におもちゃをプレゼントする。バスケットの中に入ったたくさんのおもちゃの中から一つ選ばせてあげるのだ。
 高性能なゲーム機が盛んなこのご時世に、ああいうおもちゃでもお子様は喜ぶのかな?
 今日のそのお子様、おもちゃを一つ選んだ。バスケットを回収に来た沙夜ちゃんに向かって「わーい、もらったー」と、素直な喜びを表していた。
 沙夜ちゃんはその子に一つ微笑みかけ、キッチンへと下がっていった。
 無邪気で純粋な子供の喜びに、沙夜ちゃんは心から笑顔になれただろう。それにひきかえ、手紙を渡そうとして苦笑いをさせてしまったワシときたら…。
 18:00になった。席を立ちレジへ。見知らぬ店員さんにレジをやってもらった。
 ワシが店を出ると、その見知らぬ店員さんもワシに続いて店から出てきた。何だと思ったが、はるか前方にいる、ワシより先に出たお客に何かを渡し忘れたようで、ダッシュで届けに行っていた。お疲れ様です。
 そして車で家へ帰った。
 ほら、車で来ると何もいいことないでしょ。このジンクスだけは今も健在である。

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