7月2日(土)

 早いもので、昨年の「空白の7月」からもう1年がたつのか。沙夜ちゃんに対する気持ちは停滞期だったな。今は絶望期といったところか。
 今年の7月は会えるのだろうか。早々にグレートホステスへ足を運んだ。
 外から店内を見てみる。奥のほうにいるのはいつものさんかな。
 その人をずっと見ていると、やがてレジのところへやって来る。沙夜ちゃんだった。いつものさんと間違えてしまった。
 沙夜ちゃんの髪型、ふわふわセミロングである。シルエットだけだといつものさんと似ている。以前のような頭のてっぺんで結わくティンカーベルスタイルだとすぐ分かるんだけどな。
 レジでワシを待ってくれる沙夜ちゃん。これは前回から2回連続。うれしいね。
 沙夜ちゃん「いらっしゃいませ」
 ワシは軽く会釈。
 また好きな席を選ばせてくれるのだろうな。禁煙席に歩きかけた沙夜ちゃんの後についていく。
 沙夜ちゃんはすぐに足を止める。そして、禁煙席の方向を「ショイッ!」と一瞬だけ指差した。すごく早かった。
 禁煙席全体を指したのか、いやしかし窓際のレジに近い席を指したようにも見えた。なんせ一瞬のはやわざだったので分からない。まあ一番いい席である窓際のレジに近い席に座らせてもらった。
 沙夜ちゃん「おすすめでございまーす」
 この時期限定の特別メニューを広げてくれた。まあこの中に食べたいものはないですな。
 では何を頼もうか。うん非常に迷うところだ。
 沙夜ちゃんが注文を取りに来ようかという雰囲気だった。来てほしかったが、なんせ本当に頼むものが決まってなかったので、迷っているということを露骨にアピールした。沙夜ちゃんはほかの席へ。
 ようやく注文するものが決まり、顔を上げる。横目で沙夜ちゃんの動きを見ていたが、歩いた方向などからしてワシの注文を取りに来る気配が感じられた。そのとおり沙夜ちゃんがワシの背後からやってきた。
 沙夜ちゃん「はい」
 そう言って注文を取るポジションに着く。
 面白い。「お決まりですか」とか「お待たせしました」ではない。「はい」である。呼んだわけではない。
 最初の席の案内にしろ、この注文の取りに来かたにしろ、もはや客に対する態度ではない。ほかの客にやったら大変なことになる。
 ワシだからやるのだ。
 ワシは特別だから。
 ワシならば許される、それは沙夜ちゃんを知っているから。沙夜ちゃんもワシをよく知っている。そしてワシは「客」という存在をはるかに超えているのだ。
 …とか、いつしか言ったことあるようなことを再び考えながら、注文したポテトサラダが出てくるのを待った。
 沙夜ちゃんがサラダ用のフォークを持ってきてくれた。沙夜ちゃんの顔を見ようとしたが、テレてしまって見られなかった。
 入店のときもそうだった。会釈はしたものの、沙夜ちゃんの顔は見ていなかった。見られなかった。ここに来て何をテレているのだろうか。
 サラダを食べ終わる。そのころから沙夜ちゃんの姿がパタリと見えなくなる。
 そして40分近くたってようやく表に出てきた。
 ワシは1時間半しか店にいないのに、40分裏へ行かれちゃうと辛いな。
 沙夜ちゃんが不自然なルートでワシの席に歩いてくる。明らかにワシに何か用がある様子。なんだ?沙夜ちゃんなんだ〜!?
 沙夜ちゃん「お皿をお下げします」
 どうもありがとうございます。
 あれ?そういえばお皿を下げるのは珍しいな。最近は店を出るまでお皿を下げないことばかりだったが。特に一人で来ている客に対してはそうだった。
 それが沙夜ちゃんがお皿を下げた。珍しい。ワシに対する心境の変化でありますように。
 やがて17:30になり、そろそろ出ようとする。
 帰る支度をしてレジに行こうとする。しかし先に違う客が行ってしまった。その後ろに並ぶのはつまらない。少し待った。
 その客のレジの担当は沙夜ちゃん。レジが済み、そいつらが去る。ワシが帰る支度をしていたのを見ていた沙夜ちゃんはレジから動かない。
 しかしその状況でレジに行ってもつまらないので、座って待った。沙夜ちゃんはレジから作業場へと移った。
 それを見てワシはレジへ。沙夜ちゃんがレジに来た。ごく普通に。
 別に何も面白くなかった。
 レジをやってもらう。おつりとポイントカードを受け取る。沙夜ちゃんと向かい合って立っていても、ワシは努めてすまし顔をしている。
 レジが終わり店を出る。振り返ると、すでに次の客のレジをやっていた。忙しいね…。
 いつも店を出てから気付くのだが、なぜレジのときワシは沙夜ちゃんの顔を見ないのか。見よう見ようとしているのに、気がつくと見ないうちにレジが終わっている。
 かわいいギャル面を正面から見ようよ。ますます好きになっちゃうだけだがな。

次のページへ

INDEXへ