6月25日(土)

 恒例のオンワードのセールへ行ってきた。けっこう買物にハマり、16:00を大きく過ぎた。
 もちろん今日もグレートホステスに行くつもりだった。多少遅くなっても、土曜日は沙夜ちゃん17:00から働くことも多いから、充分に間に合う。
 17:00を過ぎてグレートホステスに到着。いつもどおり裏口から入る。駐輪場を見てみる。
 うむ、沙夜ちゃんの自転車がない。17:00の時点でいなければ今日はいないことが濃厚だ。18:00以降から働き始めたのは見たことがない。
 もうやめてしまった、こういう日がいずれ来ることも忘れてはいけない。
 店に入る。新店長の案内。
 ここの店員さんはお客が入ってくると、レジのところまで客が来るよりも前に自分から出入り口付近へ行き、客を迎える。よく徹底されている。
 それが常連客となるとそういうことはせず、「どうぞ」と言うだけしていつもの席に通す。
 しかしここは新店長、まだワシのことを覚えていない。ワシが入るなり出入り口まで押し寄せる。どいてくれ、禁煙席でいいんだよ〜。
 新店長「いらっしゃいませ、お一人様でしょうか。禁煙喫煙のご希望は」
 禁煙席であると答える。一日も早くワシを覚えてね。店員の入れ替わりがごく少ないだけに強くそう思う。
 やれやれと思ったところで、うつむいていた顔を上げて正面を見る。
 あっ、沙夜ちゃんだ…。
 店長とあんなやり取りをしている最中に、ドリンクバーのほうからレジへ歩いていらっしゃったのだ。
 ワシの存在に気付いていた沙夜ちゃん、「あっ…」という表情でワシを見ている。じっと見ている。ずっと見ている。
 ワシもてっきり沙夜ちゃんはいないもんだと思っていたから「あっ」という感じで沙夜ちゃんを見た。じっと見た。
 見つめあっているのだ。
 そして沙夜ちゃんは「いらっしゃいませ」を言わない。入ってきた客を目にしたら必ず言うはずだ。
 特別な存在モード続行中。
 やがて沙夜ちゃんは視線を外してキッチンへ入り、それと全く同時にワシも店長の案内で歩き始めた。
 いつも座っている「レジに一番近い4人がけの席」よりも一つ奥の席へ座る。セルフサービスじゃなくなったお冷を沙夜ちゃんが持ってきてくれた。水滴のついたコップにできた指の跡に萌え。
 ワシはその「レジに一番近い4人がけの席」を正面にして座っていた。その席には中年の夫婦が座っていた。向かい合って座っているのではなく、二人とも同じ方に座っているのだ。つまり肩を並べて。
 その中年夫婦、仲がよく肩を組んで座っちゃっている。しかも悪いことに、この二人はワシのほうを向いて座っている。つまりワシはイチャイチャ中年カップルと正面に向かい合って座っているのだ。
 別に目のやりどころには困らなかったが、それにしても仲がよすぎる。白髪なのにイチャイチャだ。沙夜ちゃんプリーズ!
 のどが渇いていたのでドリンクバーを頼むか。それと、肝機能障害に利くブロッコリーが食べたかったので、ガーデンサラダを頼もうとしたのだが、季節が変わって内容が変わっていた。ガーデンサラダはおからの入ったバージョンになっていた。これは食べられん。
 ポテトサラダにした。これにもブロッコリーが入っているし、えびに代わってサーモンになっている。これよい。
 めずらしく注文を決めるのに時間がかかった。そして顔を上げて注文を取りに来てくれるのを待つ。沙夜ちゃんが来てくれた。
 注文を取り終わってメニューをさげようとする沙夜ちゃんの横顔を見た。ギャル面ではあるが、ほのかに浮かべる店員としての笑みはすごくかわいかった。
 準備をしてくれたのも沙夜ちゃん。フォークを一つテーブルに置いてくれた。
 持ってきてくれたのも沙夜ちゃん。小さなお皿のポテトサラダを真ん中に置いてくれた。
 いやいや気が楽だ。ちょっと前は「は、話しかけないと…」と息を荒げていたもんだから。今は沙夜ちゃんが近くに来てくれる喜びだけを噛み締めていればいいのだ。あ〜幸せ。
 今日の沙夜ちゃん、裏方に行ったり表に来たりと、両方で忙しそうだ。
 しかし表に来てくれるのはいいのだが、ドリンクバーでの作業が多い。この席とドリンクバーの間には例の仕切りがあり、沙夜ちゃんがよく見えない。仕切りを通して見えるシルエットで我慢した。
 沙夜ちゃん、レジで店長と仲良く話してる。若乃花店長と同じくらいとまではいかないが、けっこう盛り上がっている。
 なんだ沙夜ちゃん、どの店長とも仲良く話すんじゃん。日がたてばその店長ともかなり仲良くなるんでしょ。
 喫煙席の作業場では新人さんとも仲良くしている。沙夜ちゃんにとっていいバイト先なのだな。
 やがて18:00になり、沙夜ちゃんの姿が見えなくなる。そして控え室から私服の沙夜ちゃんが出てきた。
 黒のタンクトップにGパン素材のヒラヒラミニスカート。おしゃれだね。ワシは今日オンワードのセールに行ったものの、おしゃれな服選びはできないよ。
 まだ働いてる店員さんと一言二言言葉を交わし、店を出られた。
 ワシは窓際の席に座っていたので、外を歩く沙夜ちゃんがよく見える。しかしここはモロには見ないで横目で見ていた。
 そのとき厨房のバイトの人が出勤してきて、立ち止まってまた言葉を交わす。そしてワシの住む街とは逆のほうへと歩いて帰って行った。
 その20分後、ワシも店を出た。
 入店したときのあの見つめあい、手紙を渡す前にはなかったことがここに来て起こるようになった。
 本当に沙夜ちゃん、ワシを拒否したの?本当に何とも思っていないの?
 そういうプラス思考をする元気が少し出てきた夏日の土曜だった。

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