2月27日(日)

 先週は仕事でグレートホステスへ行けず。年度末で沙夜ちゃんもいつやめちゃうか分からないという状況で、行けないというのは本当に困る。今日はしっかり行くぞ。2週間ぶりにグレートホステスへ。15:30発で自転車で行った。
 自転車をこぎながら店内を見てみる。沙夜ちゃんの姿は見えず。今日はいないのかな?
 駐車場に入り、徐々に見えてくる駐輪場の自転車を左から順番に確かめる。そしていちばん右の位置に青い自転車、サドルに「BOKO」の文字。沙夜ちゃんがいる!一気に緊張がピークに達した。
 駐車場から店の入り口に向かう。店内を見てみると、沙夜ちゃんがレジの横に、体をこちらに向けて立っておられる。ワシの存在に気付いた。
 店に入り、「いらっしゃいませー」のかわいい声がこだまする。沙夜ちゃんが出迎えてくれた。
 もう禁煙喫煙は聞かないというのはいつものことだが、今日の沙夜ちゃん、人数を聞くのもやめようかという雰囲気だった。もう毎回一人で来ているわけだし、あいさつしたらすぐに通そうという感じだった。しかしここは一応の流れもあるし、前は親父と二人で来ることもあったから、念のためにと人数を聞いてきた。
 「お一人ですか」
 軽く指を立て、またかわいく首を少し傾けながら聞いてきた。ホントかわいいぜ沙夜ちゃん!
 案内してくれる沙夜ちゃんの後をついていく。2週間ぶりというせいもあり、ワシは店に足を踏み入れた瞬間から、さっきピークであったはずの緊張感がさらに高まった。沙夜ちゃんが案内してくれるとなるとなおさらだ。その緊張感から病気の発作が起きそうになる。
 まずい、本当に起きそう。ワシはこらえるため、足の指先を痛めつける。足の指に全体重を乗せて歩く。そうすると、傍から見ると変な歩き方になる。しかし沙夜ちゃんはワシに背を向けているから見ていないし、発作を起こすよりはマシなので、存分に変な歩き方をして発作をこらえた。
 やがて発作が起きそうなのが治まり、それと同時に沙夜ちゃんが振り向いて「こちらで…」と席に通してくれた。
 いやいや非常に危なかった。それにしても薬がまるっきり効いてないなぁ。座った後も足の指に痛みが残り、しばらくはつらかった。
 案内してくれた席はキッチンの真ん前。これなら沙夜ちゃんが裏にいても常に見ていられるぞー。
 いつもどおりサラダを注文しようと決め、座って待っている。沙夜ちゃんは注文を取りに来てくれる様子がない。
 かなり時間がたち、亀島さんが注文を取りに来てくれた。亀島さんでもいいか。沙夜ちゃんに次ぐ第2位のプリンセスだから。とはいえ、注文を取った人がいつも準備からお品運びまでやってくれるわけだから、今日は沙夜ちゃんはワシの所に来ないという事実には困り果てた。
 しかし、サラダのドレッシングを持って来てくれたのは沙夜ちゃん!うれしかったが、ドレッシングを持って来ただけだから滞在時間は約3秒。しかもワシに背を向けていたのでこれでは話しかけられるはずがない。
 続いてサラダを持って来てくれたのはまた沙夜ちゃん。だがテーブルに置いてすぐにほかへ行ってしまった。伝票は?
 ただでさえ話しかける勇気が微量しかないのに、このように話しかけにくい状況だとますます無理だ。まぁ最近そうなのだが、もう最初から声をかけることをあきらめていたから、予想どおりという感じだ。
 サラダが来たとたんに沙夜ちゃんの姿が見えなくなる。休憩だろう。その間、いろんなことを思いながらサラダを食べた。
 話しかけることにかなり消極的になってきたこと、年度末が迫りチャンスもそんなに多くないこと…などなど。この1年間ワシは何をしていたのだろう。
 食べ終わり、持って来た地域新聞を眺めている。すると沙夜ちゃん仕事再開。少し髪が茶色くなった沙夜ちゃんを見ていた。
 ドリンクバーで作業する後姿、素敵である。しかし、見れば見るほどその存在の遠さを感じてしまう。こんなかわいい子を彼女にすることなんて出来るのか。ワシのことなどもうすでに見ていないのではないか。積極性が失せているワシが考えても仕方のないことなのだが…。
 しばらくして沙夜ちゃんはトイレ掃除へと向かう。
 少々長めに作業をしているらしく、なかなか出てこない。心配になって席から身を乗り出すようにしてトイレのほうを見た。すると同時に沙夜ちゃんが出てきた。
 キッチンへ入る沙夜ちゃん。その直後、亀島さんがキッチンからワシのことをニコニコしながら見ている。沙夜ちゃんがワシについて何かを亀島さんに言ったのでありますように。
 今日の入店は16:00。現在17:25。あと5分で出よう。
 そんなことを考えていたら、キッチンから私服姿の沙夜ちゃんが出てきた。
 「お疲れ様でしたー」
 残りの従業員にそういってそそくさと外へ出て行った。
 あらら、先に行かれちゃった。沙夜ちゃんの上がりよりも先に出ようと思っていたんだけど。とにかくもういてもしょうがないので席を立った。
 お食事中おトイレさんがレジ。710円の会計で1,010円を出す。100円玉三つをワシに差し出しながらこう言った。
 「30円のお返しです」
 お食事中おトイレさんも少々疲れ気味だ。
 今日もいつもどおり何もなかった。日がたてばたつほど話しかけにくくなってくる。
 もうね、黄色信号ですよ。最近はグレートホステスに行くのがおっくうになってきてる。最初から話しかけられないということが目に見えていて、また何もなく気が重くなるくらいならもう行かないほうがいいのかもと思うのだ。
 かと言ってこの出会いを何もせず逃してしまうのも嫌だし…。当たって砕けたほうがマシなのでは!
 よし、次は話しかけるぞ!でも話しかけたところで何かあるのかというと、そうでもなさそう…。
 さまざまな考えをぶつかり合わせながら、すっかり日の長くなった景色の中を自転車で帰っていった。

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