12月25日(土)

 昨日のクリスマスイブにグレートホステスに行こうとしたのに、バイトで残業するはめになり行けなくなった。聖夜に沙夜ちゃんと同じ空間にいるというのが今年のクリスマスの予定だったのだが、おっさんたちと宅配寿司をつまむクリスマスになってしまった。
 しかし、昨日はイブである。本当のクリスマスは今日だ。今晩グレートホステスへ行こう。
 18:00ごろ、歩いてグレートホステスへ。土曜日だけどいるかな。いたとしても、この時間だともう上がってしまったかな。あれこれ考えるといない確率のほうが高い。いるのを確認してから入店しよう。
 駐輪場を見てみる。人気キャラ「マヨ次郎」の自転車があればいるのだが…。ん?沙夜ちゃんのらしき青い自転車がある。しかしこれにはマヨ次郎がついていない。違うのか?でもサドルに「BOKO」と書いてあるし、後輪の鍵はかけてないし、どう見ても沙夜ちゃんの自転車にしか見えないのだが…。確信は持てなかったのでしばらく店の外で店内を見てた。
 クリスマスの夜である。寒い。でも確認できるまで待つぞ。
 15分後、沙夜ちゃんいるー!!あの自転車、やっぱり沙夜ちゃんのだったんだ。それにしても人気キャラ「マヨ次郎」のベルはどうしたのだろう。マヨ次郎がもぎ取られてベルの土台だけになっていた。だれだいたずらしやがったのは!許さん!!
 店に入る。沙夜ちゃんが来てくれた。ちょっと驚いたような表情でワシを見てる。そりゃそうだよな。この時間に来るのは珍しいし。
 いや、クリスマスに一人で来られたもんだから、気持ちが伝わったのだろう。
 案内してくれるのか…と思ったら、沙夜ちゃんはワシのところに来てくれたのではなく、ほかのお客さんに呼ばれて注文を取りに行く途中だったのだ。なんだよ残念。
 しかしほかのお客さんのところに行くのを躊躇していたのがすごく印象的だった。案内したかったのだろう。しかし呼ばれて返事して行ったからには、そのお客さんを優先しなければならない。仕方のないことだ。
 代わりにお食事中おトイレさんに案内してもらう。
 注文は何が何でも沙夜ちゃんにとってもらうぞ!ほかの店員が近づいてきてもまだ迷っているフリをする。
 しばらくして、介入しないおチビちゃんが注文を取りに来る。まだ決まっていないと跳ね除ける。沙夜ちゃん、来てくれ!頼む!!
 しかし沙夜ちゃん、ワシの所に来ようとしないな。っていうか、呼ぶのが普通だろ。でも、昼間にサラダを食べに来るときは呼ばなくてもすぐに来てくれるんだけどな。
 そうこうしているうちに10分がたってしまった。お食事中おトイレさんが注文を取りに来る。さすがにまだ決まっていないとはいえないよ。仕方なく注文する。夕飯だったのでハンバーグステーキを頼む。
 基本的に注文取った人がお食事の用意をする。だから沙夜ちゃんに注文を取ってほしかった。当然今日はお食事中おトイレさんが準備をする。
 しかし!ハンバーグにかけるソースは沙夜ちゃんが持ってきてくれた!でも持ってきて置くだけだから超短時間。声はかけられません。
 うれしかったのは、セルフサービスのはずのお冷を、お食事中おトイレさんがワシに持ってきてくれたのだ。一回店長がやってくれたことがあるのだが、常連の証だろう。
 しかしお食事中おトイレさんはワシを席に案内する際、禁煙席か喫煙席か聞いてきた。この人はまだワシのことを覚えていない。常連という意識はないはずだ。ワシにお冷を持って行くよう、だれかに指示されたのだろう。沙夜ちゃんじゃないよな。明らかにお食事中おトイレさんのほうが年上だから、指示するってことはないだろう。
 本来客がやるべきことを店員さんがやってくれたので、しっかりお礼を言っておいた。その光景を、リニューアルした喫煙席作業場から見てる沙夜ちゃん。まぁ持って来てくれたのが沙夜ちゃんだったらうれしさは数兆倍になるんだけどな。
 さて、注文した和風ハンバーグステーキが来た。グレートホステスでまともに食事をするのは久しぶりだ。ソースをかけてもらい、熱によって飛び跳ねるので、おさまるまでカバーをしておく。店長がカバーを外しに来てくれた。
 クリスマスの夜に一人でハンバーグを食べるワシ。ワシのことを少し猫背で見ながらキッチンに入る沙夜ちゃん。
 食べ終わる。沙夜ちゃんがほかの客の皿をさげるついでにワシの皿もさげに来る。つまり沙夜ちゃんの両手は皿でいっぱい。とても声をかけられる状態じゃない。呼び止めて重い思いさせるわけにはいかないでしょ。ワシは遠慮がちなもんで。
 沙夜ちゃんがワシの右となりの席を片づけに来た。皿を片づけ、テーブルを拭いていたとき、そのテーブルに置いてあった伝票を入れる筒に手が当たってしまい、筒がワシの足元に飛んできた。
 これはチャンス!拾って手渡すためにすぐに足元を探した。しかし見つからない。すると、右隣のオバン客が自分の足元から伝票入れの筒を拾い上げ、沙夜ちゃんに手渡した。惜しくもワシの足元をすり抜けて隣の席に行ってしまったのだ。うん、実に惜しい。
 それにしても…それにしても…、進展させることが出来ない。一体どうしたらいいんだよ。遠慮がちなのを捨てて思い切って話しかければいいんだろうけど、相手はワシにとっての女神だ。そう簡単には出来ない。いいタイミングだってなかなか来るもんじゃないし。
 クリスマスの夜を沙夜ちゃんと同じ場所で過ごせただけでもいいということで、一時間半で店を出た。店長にレジをやってもらった。
 会計中も全くワシのことを気にとめる気配のない沙夜ちゃん…。夜道を自転車で帰る。いつもよりもこういう思いが強い。
「無理だよ…」

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