6月4日(土)

 15:30出発でグレートホステスへ。
 どんよりとした曇り空。夕立が降ることは間違いないだろう。
 裏口から駐車場に入り、駐輪場を見てみる。うむ、沙夜ちゃんの自転車はない。さすがに今日はお休みか。
 毎週のように土日働いてたわけだ。たまにはお休みがあってもおかしくはない。
 しかし以前のように店外から様子を見てるってことはもうしない。沙夜ちゃんがいなくても入る。一生懸命さが少し失せたのかもな。
 それに沙夜ちゃんがいなくったって、優しい若木さんがいるしね。迷わず入店した。
 その優しい若木さんが出迎えてくれた。
 若木さん「お一人ですか。どうぞこちらへ」
 禁煙席の角の四人がけの席に案内されて座った。ここは沙夜ちゃんに手紙を渡そうとして失敗した時の席である。
 いつも頼むポテトサラダのような300円クラスのサラダが増えた。以前はもう少し値段が高かったスパイシーチキンサラダも300円になった。これとドリンクバーを注文した。担当は若木さん
 サラダが来て、ドリンクバーでコーラを注ぐ。黙々と食べて、その後は持ってきた書籍でヒマつぶし。
 この席に座ったのは、あの日以来初めて。あのときの悪夢が急によみがえってきた。
 渡そうとドキドキしながら沙夜ちゃんが来るのを待っていたあの感じ、後ずさりしながらワシの申し入れを断る沙夜ちゃんのあの姿…なんだかリアルに脳裏によみがえってくる。同じ席に座れば、そうなるのも無理はないよな。
 そんなことをしていたら、外は激しい雷雨に見舞われた。やっぱり来たね夕立が。
 そんな外の景色を見てる。ワシの目の前の席には、雷雨に驚きながらも普通に仕事の話をしている3人組。一人で一生懸命働く若木さん。今日はそんな光景だった。
 ワシの席は窓際なのだが、この大きな窓は下の部分が曇っていて、だれかが入店しようと近くを通ると、人影は見えるがハッキリとその姿は見えない。
 人が通るたびに、入店するその人を注意して見てた。沙夜ちゃんかもしれないから。
 時刻が17:00まであと10分となったとき、また一人窓の外を通った。なぜかよく分からないが、その人に関してはより注意して見てた。無意識のうちに。
 それは沙夜ちゃんだった。今日はいないと思っていたのでちょっと得した気分。入店してよかったと思った。
 そして素直にうれしいと思えた。まだまだ沙夜ちゃんのこと好きなんだな。
 ところが。
 店に入った沙夜ちゃん、奥にいた店長と顔をあわせる。すると、そこに立ち止まり、超満面の笑みで言葉を交わした。
 そしてから控え室へと入っていった。
 交わした言葉の内容は聞こえなかったが、おそらく大雨の中歩いて来てこんなにぬれちゃった、とかそんな感じだろう。
 普通わざわざ立ち止まってそんなささいな会話を超満面の笑みでするかね。店長と仲がいいのはわかっていたが、ちょっと普通じゃないような感じがする。
 あの満面の笑みは、間違いなく愛想ではない。心の底からの笑みだ。
 もしかして、店長とできているのではないか…?
 ワシの手紙を受け取れなかったのは付き合っている人がいるから、それはいいのだが、それがよりによってあの店長か?
 沙夜ちゃんが土日も休まず働くのも、1年以上辞めずに働き続けるのも、店長に会いたいからではないか?
 まてよ、付き合っているなら何も働いて会う必要はない。普段会えるわけだから。でもそれもわからないぞ…。
 このままここに通い続けると、いずれは悪夢を見せられるような気がしてきた。そうなる前に通うのをやめたほうがいいのでは…。
 そんなことを考えていたら、制服に着替えた沙夜ちゃんがお仕事開始。
 ワシのことは見てないが、存在には気付いているだろう。過去の実績で証明済み。
 仕事中も絶えず店長と話している沙夜ちゃん。二人でレジに立って話しているこの光景はもうおなじみだ。
 作業がひと段落し、レジ横で待機。これがワシの超正面。見てないフリして見ていると、またそこに店長が。沙夜ちゃんの横についてまたお話し。
 沙夜ちゃんのことは見たいが、この光景は見たくない。
 店を出る予定だった17:30をとっくに過ぎ、時刻は18:00になった。沙夜ちゃんが来たもんだから延長してしまった。
 雨はいっこうにやむ気配はない。大雨の中歩いて帰るか。
 上着を着て帰る準備。沙夜ちゃんはそんなワシを見たが、いつしかのようにドリンクバーのところで待機するということはしない。4月、5月が絶頂だったな…。
 というか、沙夜ちゃんにレジをやってもらうのを避けようとしているワシがいる。なんか怖かったから。
 だからお食事中おトイレさんか店長がレジに行くのを待っていた。しかしいっこうにその気配がない。ついにはレジ付近は無人になった。
 別に沙夜ちゃんを避けることはないだろう。普通にレジに行って、そのときそこにいる人にやってもらえばいいじゃないか。もう意識しなくていいのだから。
 ようやく席を立ち上がる。そのときレジから少し離れた場所に沙夜ちゃんがいた。立ち上がったワシを見て「ありがとうございました」と言ってレジにスタンバイしてくれた。
 これもいつしかのような奇跡のレジとはほど遠い。ごく普通だ。そんなわけで普通に会計を済ませて店を出た。
 弱まる気配すらしない大雨に打たれながら歩いて帰った。

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