4月24日(日)

 晴天。運動不足ということもあり、歩いてグレートホステスへ行こう。いつもより少し早めに家を出ようと決めた。
 しかし、腰が上がらない。結局また話しかけられない自分がもう見えていたからだ。
 だが沙夜ちゃんに対する気持ちはピークである。話しかけないわけにはいかない。何としても、何としてもだ…!
 そんなことを考えていたら15:30になってしまった。いつもどおりの時間の出発となった。
 ゆっくり歩いてグレートホステスに到着。だんだんお店が近づいてくる。中を確認するためにメガネをかける。
 沙夜ちゃんが見えた。店から少し離れた位置から確認できた。お客さんの注文取りの最中だ。今入るとご案内してもらえないだろうから、わざと裏口から遠回りで入る。自転車もありますな。
 入店。喫煙席の作業場から沙夜ちゃんが来てくれた。ワシはもう目をそらすなんてことはしないぞ。沙夜ちゃんにしっかり会釈。逆に沙夜ちゃんはワシの目を見ずに会釈。レジの近くの4人がけの席に案内してくれた。ここはよく見える席だ。
 先週と同じくポテトサラダとドリンクバーを頼むことに。顔を上げて注文取りを待つ。沙夜ちゃんが来てくれた。丁寧に注文。
 しかしこのメニューだと食事の用意はフォークを一本置くだけ。短時間だ。それを考えると食器を多く使うメニューを頼んだほうがいいのかな。それだと普通に飯になってしまうな。
 普通は注文取ったあとすぐにフォークを持ってきてくれるのだが、なかなか持ってこないときもある。こういうときはサラダと一緒に持ってくるのだ。だから今日は少し長めにいてくれるかも。
 やがて沙夜ちゃんがサラダとフォークを持ってきた。テーブルに置き、伝票を取り出した。
 「ご注文は以上でよろしいですか」
 ワシは大きくうなずく。そして沙夜ちゃんは伝票を筒に入れて、今日のふれあいは終了した。
 終了…。
 ワシは一体ここに何しに来ているのか。サラダが食べたいだけなのか。あんなに気持ちが盛り上がってたのに…。
 前回と同様、コップにカルピスを注いでサラダを食べる。今日も何もなく、また来週である。もうヤダヤダ…。
 今日は沙夜ちゃん、亀島さん、久しぶりにいつものさん。新人がいないから沙夜ちゃんは表に出ての仕事が多い。レジをやることも多い。席がよくて近くで存分に見ることができた。
 レジで沙夜ちゃんと亀島さんが楽しそうに話している。かなり盛り上がっている。大きい声なのだが何を言っているのかは聞き取ることができない。思わず耳を澄ましてしまったが、ほかの客の声にかき消されてしまう。それにしても本当に楽しそうだ。
 ドリンクバーで作業する沙夜ちゃん。隣の席の仕切りがちょうどドリンクバーを隠してしまい、そこで働く沙夜ちゃんが見えない。あの仕切りは本当に邪魔だ。
 このレジに近い席はとてもいい席なのだが、位置関係からキッチンが全く見ることができない。沙夜ちゃんがキッチンへ行ってしまうとかなり寂しい思いをする。しかし今日は例の新人もいなく、キッチンへ行くことが非常に少なかった。レジや喫煙席、そしてワシの近くの席で仕事することが多かった。たくさん見ることができた。
 沙夜ちゃんが喫煙席でお仕事中、厨房からお品ができたことを知らせるランプが音を立てて点灯する。それを見たウエイトレスさんはすぐに厨房へお品を取りに行くのだが、このとき沙夜ちゃんは点灯したランプをじっと見つめたまま動かない。ずっと見ている。5番のランプをじっと見続けている。どうしたのだろうか。ワシも一緒になって5番のランプをじっと見た。
 お仕事がひと段落し、レジの横に立つ沙夜ちゃん。祈るときのように手を組んで立っている姿、もうかわいい以外の言葉は当てはまらない。
 お食事中おトイレさんが出勤してきた。もう17:00か(この人時計代わり)。やはりここに来ると時間がたつのが早い。
 やがてお客の出入りも落ち着き、沙夜ちゃんは喫煙席の作業場でお仕事、亀島さんがレジでお金の整理をしている。
 時刻はもうすぐ17:30。今日のタイムリミットだ。そろそろ出るか。無難に亀島さんにレジやってもらおう。
 帰りの支度をしていると、ちょうど亀島さんがお金の整理を終えてキッチンへ行ってしまった。レジは無人である。このときにレジに行くとだれがやってくれるのか、いつも不安になる。沙夜ちゃんにやってもらおうとして外してしまうとウツロだから、いつも最初から沙夜ちゃん以外の人にやってもらおうと決めている。
 沙夜ちゃんはドリンクバーで忙しそうに作業中。よいよい。だからほかの人でいいよ。17:30になり席を立つ。
 すると、ドリンクバーで作業中の沙夜ちゃんが作業を中断して、真っ先にレジに向かってくれた。この光景、懐かしい!前回ほどの奇跡ではないが、うれしかった。
 沙夜ちゃんにレジをやってもらった。ワシはいつもよりもレジ台にピッタリくっついていた。少しでも距離を縮めようと。でも話しかけないんじゃ意味なし。
 9,500円のおつりとポイントカードをくれた沙夜ちゃん。少し手が触れたぐらいでは喜べなかった。
 いつものように出入り口で立ち止まってつりを財布の中に入れる。背後にいる沙夜ちゃんを想いながら。
 店を出ようと歩き出すと同時に後ろを見てみた。ちょうどワシのいるほうから目をそらしている沙夜ちゃんの姿があった。
 店外から中を見ながら歩く。また忙しそうに働く沙夜ちゃんの姿が見えた。
 裏口から出て、再び店内が見える位置に来た。喫煙席の作業場でお仕事している沙夜ちゃん、たまたま体をこちら側に向けていた。そして目が合った。ずっと見ている。距離はあったがそれがハッキリ分かった。ワシも目をそらすことはしない、ずっと見続けた。
 毎回毎回話しかけられないといって嘆いているワシだが、まあ前から言っているとおり他愛もない話を沙夜ちゃんとしたいのだ。きっかけをつかむために。「このドレッシングはどんな味ですか」とかの野暮用ではダメだ。
 ではなぜそれができないか。勇気がない、これが第一原因だ。そして第二の原因として思ったのが、「雰囲気」である。さっきのレジのときも「いま他愛もない話をしたらどうなるか」をシュミレーションしたのだが、どうもおかしな顔をされそうな気がしてならなかったのだ。
 たとえば「週何日働いているんですか」とか言ったとすると、「えっ、何でそんなこと聞くんですか?」というリアクションが来そうな気がしてならなかった。
 つまり、そういう雰囲気が出来上がらないのだ。自然にできるものではないから作らなければならないのだが、ファミレスの店員さんとじゃやっぱり難しい。
 その硬い雰囲気を打ち破ったときこそが、恋愛成就への第一歩である。前進ではない。あくまでもスタートである。
 そのスタートラインに立つのに1年以上かかっている。いまだに立てていない。成就までの道のりは果てしなく遠い。
 さて、いよいよ沙夜ちゃんを好きになって2度目のゴールデンウィークがやってくる。去年はこれを境に沙夜ちゃんがワシを避けるようになってしまったということがあった。今年はいい変化がありますように。

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