6月20日(日)

 オンワードのセールの帰りにグレートホステスへ。
 この日は日差しが強く、店のガラスに日が反射して中が見えにくい。ワシは目の上に手を当てて店内を伺う。いろいろな角度から見るため店付近をうろうろした。
 すると、メガネをかけて自転車に乗っている男に「なんだこいつは」という目で見られる。そいつは駐輪場に自転車を止めて店に入った。
 こいつも沙夜ファンか?
 引き続きうろうろする。すると!町の方向からカランコロンとサンダルの音を立てながら沙夜ちゃんが私服で歩いてくるではないか!3回目のご出勤姿拝見。格好からして沙夜ちゃんはギャルだね。
 沙夜ちゃんはこちらのことをまったく見ることなく店に入った。
 ワシはどのタイミングで入ればいいのだろうか。考えるのが面倒くさい。かまわず入店。
 普段あまり見かけない店員さんに案内してもらう。注文取りはいつものさん。
 沙夜ちゃん制服に着替えてお仕事開始。「よろしくおねがいしまーす」とあいさつしていた。今日もキッチンの出入口前だから裏方がよく見える。
 で、さっきの自転車メガネ男はウエイターだった。そりゃ、店外をうろうろしてたら「なんだこいつ」って思うわな。
 ピッツァマルゲリータをたのむ。持って来てくれたのもいつものさん。
 沙夜ちゃんはワシのいるブロックにまったく来ない。裏方か喫煙席ばかり。ワシの近くに来ようとしない。
 しかし今日は特にショックを受けることはなかった。なぜなら、もう半分近く沙夜ちゃんをあきらめているからだ。
 話しかける機を逸したこと、普段着を見てかなりのギャルで付いていけそうにないこと、そしてなにより沙夜ちゃんにワシに対する気がなくなってしまったこと。
 避けているのでは話しかける機会も当然ない。今はどうしようもない事態になってしまったのだ。
 そして、もう通うのもやめようかと思っている。これ以上来ても何もないから。
 そんなすっからかんな気分でレジへ。だれもいなかったので待っていたら亀島さんが走って出てきた。会計は950円、千円を出した。おつりは50円であることを告げる亀島さんの目はワシの目を見ていて、満面の笑顔だった。いいことです。
 今日も何もなかったが、特になんて思うことなく歩いて帰った。
 思い返せば沙夜ちゃんのことが気になりだしたのは今年の初め。今は6月だから、半年間楽しいストーリーを演じさせてくれた。ワシがいて、沙夜ちゃんがいて、それを知るウエイトレスさんがいて。今年の大きな思い出である。
 さだまさしの歌に、こういう歌詞がある。
 「風は移り気 身をまかせてはいけないよ 時を越えて変わらないのが愛だよ」 (『しあわせについて』より)
 沙夜ちゃんは一時の風だったのである。ある日突然こちらに吹き、ワシはその風に包み込まれた。しかし風はいつまでも同じ方向に吹かない。半年過ぎて、違う方向に吹き去っていった。ただそれだけのことである。
 ワシにはその風を呼び戻す力があるかどうか。それは分からない。
 今後は成り行きに身を任せ、「奇跡」が起こるのを信じるとしよう。

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