5月1日(土)

 ゴールデンウィークの沙夜ちゃんはバイト三昧なのか。それともいつも通りか。バイト三昧ならば、ワシもグレートホステス三昧にするつもりだ。
 そんな決意をしつつ、グレートホステスへ向けて自転車をこいだ。
 外から沙夜ちゃんが見えた。駐輪場にも人気キャラ「マヨ次郎」の自転車がとまっている。その沙夜ちゃんの自転車にワシの自転車を横にぴったりくっつけて置いた。
 店内への案内は若乃花店長。禁煙、喫煙席かを聞き、席に付けば本日のおすすめを言う。沙夜ちゃんとは打って変わっての対応だ。
 注文をとったのは冷静沈着な若木由美子さん。食事の用意、頼んだガーデンサラダを持ってきたのも若木由美子さん。
 そう、沙夜ちゃんが見当たらない。またワシが入店したのと同時にいなくなってしまった。こんな状況はもう過去の経験から心配なしということが分かるのだが、でもやはり心配になってしまう。自転車はあったわけだからいるはず。でも働いてる様子が見えないので客席を見回してしまった。
 ワシの右の席には、なんかヨット部っぽい若者連中がいる。この中にいるのか?いやいやいないね。冷静に沙夜ちゃんの登場を待った。
(なぜこの若者連中の中に沙夜ちゃんがいるのかと思ったかというと、情報によると沙夜ちゃんは高校でヨット部に入っているらしいからである)。
 入店から20分後、大きなコップケースを持った沙夜ちゃんが登場。いやいやホントかわいい。そしてワシの存在に気づいた。
 今日は作詞も何もせず、ずっと沙夜ちゃんを見ていた。メガネかけてお顔を見た。かわいい。とてつもなくかわいい。
 さっき言った右隣の連中から会話が聞こえた。
 「アタシ、ヨット始めてから手が豆だらけになっちゃってさ…」
 おいおいホントにヨット部だったのかよ。ここの地域ではヨットはメジャーなスポーツなのか。
 ってか、沙夜ちゃんの後輩か?こいつらの退店をよく見てみた。
 「ありがとうございました、またおこしくださいませ」
 沙夜ちゃんのそいつらに対する対応は別に普通で、ほかの作業をしながらポツリと言った。後輩ではないらしい。
 厨房からのメニュー出来上がりランプが付く。沙夜ちゃんが見たのでワシも見た。目があっちゃった。
 さて、14:30に入ってもう16:00。おとといに続いてたっぷり見れたし、行くか。
 レジには若木由美子さん。ワシが席を立っても、喫煙席の遠方で片づけを続ける沙夜ちゃん。こりゃ気づいてくれない。でも気づいて欲しいので牛歩戦術。レジに到着。でも結局若木さんにレジをやってもらう。
 そのとき!沙夜ちゃんがワシに気づき、片づけを中断してレジの左側に来て立っている。まるで客を見送るホテルや旅館の従業員みたいに。
 ファミレスの店員はこんなことをする必要はない。現にしてないし。しかし沙夜ちゃんはワシにだけしてくれる。
 レジでのやり取りをじっと見つめる沙夜ちゃん。ワシも冷静だ。病気の症状も薬のおかげか、おきそうにならない。
 レジが終わり、行こうとする。じっと立っていた沙夜ちゃんがワシの目をしっかり見て 「ありがとうございました、またお越しくださいませ」。
 こんな沙夜ちゃんに感極まり、思わず会釈した。沙夜ちゃんはそれを見てどう反応したかは覚えていない。
 外から店内を見る。このお店のガラスは外の風景を映してしまうので、中が見えにくい。来店時は見やすいんだけどな。
 その見えにくい状況から、何となく沙夜ちゃんがレジにいたままワシを見ているように見えた。そして、ワシに向かって手を振ったというような錯覚まで起こしてしまった。
 実はこの日、再びテーブルの紙に連絡先を書いておいた。なんせ最近ワシの席の紙をじっと見ているもんだから。
 しかし今日はワシの席の片づけは後回し。紙を見てくれたかどうかは分からなかった。
 駐輪場へ。ワシは唖然とした。確かに最初、沙夜ちゃんの自転車の右隣にワシの自転車をピッタリくっつけて置いておいた。しかし、ワシの自転車が右に一つずらされ、間に何者かの原付が割り込んでいた。
 この原付の持ち主は男だろう。何者だ?沙夜ちゃんの自転車の隣に止めたがるやつがほかにいるということか。だれだそれは。ワシの自転車をどかしてまでそんなことするやつがいるとは!
 この前の厨房の男か?沙夜さんに手を出すなってか?もしやこいつは彼氏か…?嫌な予感がよぎった瞬間だった。

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